この記事では、伊与原新の「宙わたる教室」が実話と言うのは本当なのか、モデルとなった実在する高校と現在の部活動実績、活動内容を紹介します。
「宙わたる教室」は、定時制高校の科学部に集まる生徒たちの成長と挑戦を描いた青春小説です。物語の中で、生徒たちは限られた時間と設備の中で「火星のクレーターを再現する」という壮大な実験に挑戦し、学会で発表することを目指します。
著者の伊与原新は、実際に行われた研究をモデルにして、この感動的な物語を作り上げました。あとがきに実際の高校が紹介されていたので、詳しく見ていきましょう。
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「宙わたる教室」が実話って本当?モデル高校はどこ?
この小説のモデルとなったのは、大阪府にある定時制高校の科学部の活動です。
- Q「宙わたる教室」のモデル高校は?着想を得た、小説の基となった実際の研究は?
- A
モデルとなった実在する高校は、大阪府立大手前高等学校や大阪府立春日丘高等学校の定時制課程の研究発表実績が、小説のベースとなっています。
日本地球惑星科学連合2017年大会「高校生によるポスター発表」で優秀賞を獲得した研究テーマ「重力可変装置で火星表層の水の流れを解析する」から、この小説ができたとあとがきに書かれています。これは、手作りの滑車装置を使用した独創的なアイデアにあふれた研究です。
同様に、今宮工科高校定時制の科学部も上記二校と同様の教師が指導しており、彼らの重力可変装置と微小重力発生装置を用いた物性化学や惑星科学の研究は、高く評価され、数々の賞を受賞しています。
- Q「宙わたる教室」の理科教師、藤竹叶のモデルはいる?
- A
藤竹叶は小説で科学部を立ち上げた教師ですが、実在の教師ではありません。しかし、上記のモデルとなった高校の科学部を指導していた教師として、小説のあとがきには下記三名の名前が記されています。
- 久好圭治さん(現・大阪大学特任研究員)
- 谷口真基さん(現・今宮工科高等学校定時制教諭)
- 江菅純一さん(現・槻の木高等学校教諭)
※いずれも小説出版時点(2023年10月30日)の情報
- Q藤竹の大学同期でJAXAの准教授となったエリート、相澤努のモデルはいる?
- A
こちらも架空の人物ですが、あとがきには2011年に定時制高校の微小重力発生装置に注目した人物として、東京大学の橘省吾さん(※現・東京大学宇宙惑星科学機構教授)の名が書かれています。※小説出版時点(2023年10月30日)の情報
橘氏が注目したことで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)を中心とする「はやぶさ2」サンプラーチームが同様の装置で小惑星表面試料採取に向けた基礎実験に取り組んだとも書かれています。
上記のことから、橘氏をJAXAの人物として創造したのが、相澤努というキャラクターになったと考えられます。
モデル高校の現在は?
先に挙げたモデル高校、大阪府立大手前高等学校、春日丘高等学校、そして今宮工科高等学校の定時制課程は、さまざまな年齢や背景を持つ生徒たちが通う多様な学びの場として知られ、科学部の活動が活発に行われています。
各校は独自の教育方針と特色ある部活動を展開しており、作品の中の科学部のモデルともなっています。
モデル高校の現在:生徒の多様性と教育環境
これらのモデル高校では、定時制という特性を活かして幅広い年齢層の生徒が学んでいます。例えば、大阪府立大手前高等学校の定時制課程では、16歳から80代の生徒までが在籍し、学年や年齢に関係なく一緒に学ぶことができます。生徒数は比較的少なく、少人数クラスでの授業が行われているため、個々の生徒に対して丁寧な指導が可能です。
春日丘高等学校の定時制では、卒業までに通常4年が必要ですが、通信制課程との併修により3年での卒業も可能です。授業は夕方から夜にかけて行われており、働きながら学ぶ生徒や、不登校経験のある生徒など、様々な事情を持つ生徒たちが通いやすい環境が整っています。
今宮工科高等学校の定時制では、特に工業系の専門教育が充実しており、機械、電気、建築などの分野での専門性を高める授業が行われています。また、生徒一人ひとりに寄り添った「伴走型学校教育」が実施されており、個々の学習ニーズに応じた柔軟なサポートが行われています。
定時制高校ってどんなところか知らなかったけど、全日制の学校と時間帯が違うだけで同じ校舎や設備を使って学んでいるし、普通の学校なんだね。
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科学部の実績と活動内容
これらの高校の科学部は、全国大会や学会での発表などで数々の実績を残しています。
大手前高等学校の科学部は、日本地球惑星科学連合とアメリカ地球物理学連合の合同大会で、「研究奨励賞」や「優秀ポスター賞」を受賞するなど、優れた研究成果を発表しています。また、微小重力実験や固体クロマトグラフィなどの高度な実験に取り組み、学術大会でも評価を受けています。
春日丘高等学校では、科学部が高校化学グランドコンテストで金賞を受賞するなど、優れた研究実績を持っています。その他にも、日本物理学会Jr.セッションでの受賞や、微小重力実験の合同研究会への参加など、生徒たちは積極的に研究活動を行っています。
今宮工科高等学校の科学部も、日本地球惑星科学連合大会やサイエンスキャッスルなどで優秀な成績を収めています。部活動は短い時間ながらも集中して行われ、生徒たちは熱心に実験や研究に取り組んでいます。また、これらの活動を通して、科学技術の面白さや学ぶことの意義を実感し、将来の進路選択にも大きな影響を与えています。
小説はもちろんだけど、あとがきを見てブワッと感情が高ぶった人もいるんじゃないかな?僕が感情が高ぶって涙腺崩壊しちゃったよ。
モデル高校の部活動実績は?学会発表と成果
モデルとなった高校の科学部は、非常に高度な研究活動を行っています。特に注目すべきは、微小重力実験です。これらの実験は、地球上では再現できない環境を模倣し、さまざまな現象を観察することで、科学の理解を深めるものです。
例えば、大阪府立大手前高等学校の科学部は、微小重力環境を利用して「固体クロマトグラフィ」を目指した研究を行いました。この研究は、磁場勾配を用いて固体粒子を分離し、非破壊的に同定する技術を開発することを目指しており、その結果、日本地球惑星科学連合大会で「優秀ポスター賞」を受賞しました。
さらに、大阪府立春日丘高等学校の科学部は、高校化学グランドコンテストでの受賞歴があり、今宮工科高等学校の科学部も日本物理学会Jr.セッションで審査員特別賞を受賞するなど、国内外の科学大会での高い評価を得ています。これらの成果は、生徒たちが日々の研究に対して真剣に取り組み、その努力が実を結んだことを示しています。
もちろん全日制の高校と同じように科学部以外の部活動もあり、大会に出場したりイベントで発表したり活動を行っています。
モデル高校の教育方針と部活動の意義
モデルとなった高校の教育方針は、生徒たちの多様な背景やニーズに対応しながら、個々の成長を支援することを目指しています。
例えば、大阪府立大手前高等学校では、「学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養」を掲げ、部活動を通じて人間的な成長を目指す方針を打ち出しています。また、大阪府立今宮工科高等学校のスクールミッションは、「規則正しい生活習慣と自らを律する力を育み、人間力の向上を図る」ことを目的としており、部活動もその一環として位置づけられています。
部活動は、知識や技術の向上だけでなく、生徒が自主的・主体的に取り組む姿勢を育む場でもあります。例えば、科学部の活動では、自ら実験計画を立て、チームで課題を解決していく経験を通じて、探求心や協調性が培われます。
運動部や他の文化部でも同様に、目標に向かって努力する過程で得られる達成感や仲間との絆が、学業を超えた人間的な成長を促しています。
全日制の学校と同じだね。今回調べてみて、定時制高校が身近に感じました♪
「宙わたる教室」とモデル高校の共通点と違い
「宙わたる教室」は、モデルとなった高校の実際の教育活動を基にしているため、いくつかの共通点が見られます。
例えば、登場人物たちが部活動を通じて成長し、学会での発表を目指す姿は、実際の科学部の活動と重なります。モデル高校の科学部も学会での発表やコンテストでの受賞を目指しており、科学への情熱を持つ生徒たちが積極的に挑戦する姿が描かれています。
すごいー!小説で藤竹先生が夢見た世界みたい!!部活動が最先端の惑星科学に貢献してるなんて、感動ですね。
一方で、小説と現実の違いとしては、物語が描く人間ドラマの深さや個々の葛藤の詳細です。小説では、登場人物たちの個人的な問題や成長が丁寧に描かれていますが、現実の学校では、より多様な生徒がそれぞれの事情を抱えて学んでいます。
小説の登場人物たちは、一部の実際の生徒の経験を反映しているものの、フィクションとしての演出が加えられている点も見逃せません。
取材して実在の人物にモデルがいるのかも?それくらい、小説のキャラクターは実際にいそうな人ばかりでした!
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まとめ:「宙わたる教室」を通して見える教育の可能性
「宙わたる教室」を通じて見えてくるのは、教育の現場が単なる知識の伝達の場にとどまらず、生徒一人ひとりの可能性を引き出し、成長を支援する場であるということです。
モデルとなった高校の部活動や教育方針は、生徒の個性や背景に応じた柔軟な対応を重視しており、特に定時制という多様な生徒が集まる環境において、その意義は非常に大きいものです。
小説の中で描かれる挑戦や失敗、そして成功の物語は、現実の教育現場でも繰り返されています。生徒たちが自らの殻を破り、新しい可能性を見出す瞬間こそが、教育の最も価値ある成果と言えるでしょう。
「宙わたる教室」は、そのような教育の力を示し、私たちに学びの本質を問いかける作品となっています。現実のモデル高校とその生徒たちの姿を通して、教育が持つ可能性とその広がりを再認識させてくれます。
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