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【原作ネタバレ考察】宙わたる教室って、どんな話?結末から作者が伝えたいこととは

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この記事では、2024年10月NHKドラマそらわたる教室」について、どんな話なのか、原作小説のラスト、結末から作者の伊与原新が読者に伝えたいこととは何かを考察します。

全体像を簡潔に記載した後、原作小説の第一章から七章までのネタバレを含むあらすじを詳しく解説しているため、ネタバレがNGな方は原作小説を先に読むことをおすすめします。

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「宙わたる教室」って、どんな話?あらすじ概要

『宙わたる教室』は、伊与原新による青春科学小説で、東京都新宿にある定時制高校を舞台に、科学部に集う生徒たちの成長と挑戦を描いた感動の物語です。年齢も背景も異なる登場人物たちが、科学という共通のテーマを通じて学び合い、人生を切り開いていく様子が描かれています。

本作は、実際の定時制高校科学部の活動からインスピレーションを得ており、限られた環境でも大きな成果を上げた実話が基盤となっています。

ふむはむ
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実話が基になってるなんて!?あとがきに記載されているんだけど、ノンフィクション部分小説を読んだ後に読むと、じーんと来ます…。

あらすじ:『宙わたる教室』の物語概要

『宙わたる教室』は、夜間に通う定時制高校を舞台に、科学部の活動を通して再び学ぶ喜びに目覚めた生徒たちの物語です。科学部は、個性豊かなメンバーで構成されていますが、彼らには共通して「もう一度学びたい」という強い思いがあります。

物語は、彼らが科学の実験を通じて過去の失敗やトラウマを乗り越え、未来へと歩み出す姿を描いています。科学部の顧問である藤竹は、厳しい現実を知りながらも生徒たちに寄り添い、時には実験の失敗を通して、彼らに大切なことを教えていきます。

ストーリーの全体像は?簡潔に説明

物語の中心となるのは、科学部のメンバーが「火星のクレーター」を再現するという壮大な実験に挑む姿です。登場人物たちはそれぞれ過去のトラウマや現実の問題を抱えていますが、科学部の活動を通して少しずつ変化し、互いに助け合いながら目標に向かって進んでいきます。

実験の過程で何度も壁にぶつかりながらも、科学の力と仲間の支えで困難を乗り越え、最終的には学会での発表にたどり着きます。物語は、学ぶことの意味や、年齢や境遇に関係なく挑戦することの大切さを問いかけます。

主な登場人物は?キャラクターと役割

ここからは、主な登場人物とその役割を見ていきましょう。下記が物語の中心である科学部のメンバー(部員)です。

うぃんはむ
うぃんはむ

原作小説では章によって一人称(話し手)が変わるよ。岳人と藤竹が多い印象だけど、それぞれが主人公となることで、人物のバックグランドが詳細に描かれています。

ドラマ化にあたり発表されたキャスト名を共に紹介します。

宙わたる教室 登場人物相関図
NHKドラマ公式アカウント

柳田岳人(21歳):小林 虎之介

元不良で、読み書きに困難を抱えるディスレクシアの青年。定時制高校に通い直し、科学部に参加することで、自分の能力を信じ、新しい自分を発見していく。彼の成長が物語の中心となり、困難を乗り越える姿が読者に大きな感動を与えます。

≫小林虎之介の演技力についてはこちら

越川アンジェラ(43歳):ガウ

日比ハーフのフィリピン料理店のオーナー。仕事と家事に追われながらも、自分のために学び直すことを決意。科学部の活動を通して自信を取り戻し、自分自身を見つめ直すことになります。

名取佳純(16歳):伊東 蒼

起立性調節障害で不登校を経験した少女。保健室登校を続ける中、科学部で自分の居場所を見つける。実験を通じて新たな視点を得て、自分の未来に希望を持ち始める姿が描かれます。

長嶺省造(76歳):イッセー 尾形

若い頃に高校に通えなかった経験を持つ生徒。長年の夢を叶えるため、再び学びの場に立ち戻る。彼の存在は、他の生徒たちに勇気と希望を与え、年齢を超えた学びの意義を象徴します。

藤竹叶(34歳):窪田 正孝

かつては有望な研究者として期待されていたが、定時制高校の教師になる道を選んだ理科教師。彼の目標は明かされないままですが、生徒たちの成長を支える姿が描かれ、物語のカギを握る重要な存在です。

藤竹の指導は、生徒たちにとって「学び」の意義を再認識させるものであり、彼らが新たな一歩を踏み出す支えとなります。

ふむはむ
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ドラマでは藤竹が主役!ミステリアスな先生を窪田正孝さんが演じます。公開された写真が、まさに藤竹先生で感動しました…っ!

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ネタバレ注意!「宙わたる教室」全章あらすじ&詳細解説

『宙わたる教室』は、定時制高校の科学部に集まるさまざまな事情を抱えた生徒たちが、科学の力で自分の殻を破り、成長していく物語です。

以下では、各章の重要な展開を解説しながら、主人公たちの葛藤と成長、そして物語のクライマックスとその後について詳しく紹介します。

第一章 夜八時の青空教室

  • 主人公:柳田岳人(やなぎだ たけと)21歳、廃棄物を回収し中間処理を行う会社に勤務
  • 章に副題をつけるなら:再スタートの場所

物語は、21歳の柳田岳人が定時制高校に通うところから始まります。中学もまともに通えていない、不良として過ごしてきた岳人は「自分はダメな人間だ」という劣等感を持っています。

字もまともに読み書きできず、職も長くは続かず、先に退学した生徒(三浦、パク)と自分は同類だと思いつつも認めたくはない気持ちも持っています。一年生の間は仕事の都合で欠席することはあっても、学校を休んだことは一日もなかったものの、二年生になりその糸が半分切れている状態です。

文字の読み書きが苦手で文章題は解けないものの、理数系の計算式だけは得意だった岳人。実は、岳人は、“読み書きに困難を抱えるディスレクシア”という障がいを持っていました。

藤竹がそれに気づくことで、岳人は自分の困難が障がいによるものであると気づき、文字の読み書きができるようになり「自分はバカではなかったのだ」と頭を殴られたかのような衝撃を受けます。この章では、藤竹と岳人の出会いが描かれ、科学部の結成に向けての動きが始まります。

うぃんはむ
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自分はずっと出来損ない、ダメなやつだと思っていた岳人にとって藤竹との出会いで世界は一新します。暗い世界が一気に彩鮮やかになりました。

ふむはむ
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障がいを指摘された瞬間は悔しさと、今までの人生のやるせなさを感じ行き場のない感情がこみ上げ暴れたけど…落ち着いたら一気に世界が変わって見えたんじゃないかな?

藤竹は授業で「空はなぜ青いのか」と問い、それに対する実験を教室で行います。教室に青空を作る実験を行うことを通し、「この学校には、何だってある」という自身の言葉を岳人に示します。

「やりたい部活がねーよ」という岳人に対し「科学部を一緒にやろう」と誘います。

第二章 雲と火山のレシピ

  • 主人公:越川アンジェラ(こしかわ アンジェラ)43歳、夫とフィリピン料理店を経営
  • 章に副題をつけるなら:科学部の誕生

岳人と藤竹、二人の科学部が結成されます。二章ではアンジェラが主人公となり、彼女の抱えている事情が描かれます。と同時に、同級生の池本マリに関するある事件が発生します。

アンジェラの母は日本に出稼ぎに来ていたフィリピン人で、アンジェラはフィリピンの祖母の元で暮らしていたものの、日本人との混血であることから周囲にいじめられたため、母を追って日本に来ました。しかし、日本では母がオーバーステイだったため隠れて暮らさねばならず、また母は日中働きに出ていたため、アンジェラは寂しい思いをしていました。

毎日近所の学校の校庭を覗いていたアンジェラを見かねた教師(倉橋)が声をかけてくれ、学校に通えるようになったことから「自分も先生になりたい」という夢を持っていました。

うぃんはむ
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でも結局、中学に上がると弟妹ができたため金銭的な問題から学校に通えなくなります。現在は、夫と二人でフィリピン料理店を経営しているよ。

アンジェラの娘も専門学校に通うほど大きくなり、店も軌道に乗っていることから憧れていた高校に通い始めたものの、勉強には少しついていけないと思い始めています。

Q
池本マリが関与する事件とは?
A

池本マリは働きながら定時制高校に通う16歳で、日比ハーフ(父:日本、母:フィリピン)で、将来は学校の先生になりたいという夢を持っています。

定時制高校は昼間は普通の高校という側面があり、夜はマリが使っている机の元の持ち主(昼間の生徒、黒田玲奈)がペンケースがなくなったのはマリが盗みを働いたからだと言いトラブルとなります。

マリは言いがかりをつけられた挙句、妹がくれたペンケースを馬鹿にされ衝動的にカッターナイフで玲奈を切りつけようとしたところをアンジェラが庇い、それが退学云々の話へと発展します。

ふむはむ
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犯人は結局、玲奈と一緒にいた同級生と言うことが判明し終了。アンジェラはマリを自分と重ねていたんだね。

理数系が苦手なアンジェラでしたが、岳人と藤竹の実験を見ているうちに「自分もやってみたい」と思うようになります。“科学は苦手だが、料理は二人より分かる”という点から、アンジェラが科学部に加入することにより科学部の実験も前に進みます。

うぃんはむ
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藤竹先生は「自動的には分からない」と言っていましたが、興味のあることから手を動かすことにより、アンジェラは“学ぶことは楽しい”という気持ちを思い出させたんだね。

第三章 オポチュニティの轍わだち

  • 主人公:名取佳純(なとり かすみ)16歳、保健室登校の定時制生徒
  • 章に副題をつけるなら:自分自身を救うのは自分だけ

名取佳純は自律神経の異常で朝に起きられなくなる、起立性調節障害を持っています。治療法はなく心理的なストレスを減らすことが大切とは言うものの、両親は離婚し会社経営をしている母は忙しく佳純と姉にはあまり構ってはいられません。

学歴が大事だと言う母の期待に姉は応え進学校に進んだものの、佳純は応えられず「あの子は結局父親に似ている」と母に言われたことから、“母の中で自分はもう終わった存在”と感じます。

定時制高校でも保健室登校の佳純でしたが、そこで同じクラスの松谷真耶と出会います。双方過呼吸やリストカットの経験があり、真耶は手首のみならず腕までおびただしい数の傷跡があります。

ふむはむ
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切るトコがなくなって「アムカ(アームカット)」をしている真耶。生きてきた跡と言うけど…痛々しいね。

真耶は佳純を同類と感じ「抗不安剤を分けてくれないか」と佳純に頼みます。言われるがまま佳純が渡した薬で、真耶はオーバードーズ(過剰摂取)となり手首を派手に切ってしまいます。

「わたしたち友達でしょ?あたしのこと、助けてよ」と佳純に言った真耶。それを見た保険医、佐久間は「他人まで危険にさらすのなら、あなたの居場所はもうここにはない」と言い放ちます。

うぃんはむ
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自分を助けられるのは自分だけ。保健室で日々SF小説を読んで保健室にあるノートに書籍名を書いていた佳純。そのノートには藤竹からの科学部実験へのお誘いの文章があって…。

佳純は佐久間に、「学校の中にもう一カ所くらい、<ハブ>があってもいいんじゃない?」と言われ、科学部の実験を見に行ったこと、また藤竹にオポチュニティ(NASAの火星探査車)が撮った写真をもらったことから科学部に興味を持ち部員となります。

ふむはむ
ふむはむ

自分の右腕に刻まれたリストカットの痕と、オポチュニティの写真。15年の探査任務を頑張ったオポチュニティの話から、自分も前に進まないとと一歩を踏み出したんだね。

几帳面な佳純が加入することで、実験結果を詳細につけられるようになります。

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第四章 金の卵の衝突実験

  • 主人公:長嶺省造(ながみね しょうぞう)76歳(小説では74歳と記載)、過去に長嶺製作所を経営
  • 章に副題をつけるなら:世代の壁を超える学びと交流

誰よりも熱心に授業を聴き、授業中教師に質問ばかりする姿勢が周囲から煙たがられている、最年長の生徒です。

集団就職で苦労をし、町工場を営んでいた経験から、現在のクラスメイトの行動が理解できないと感じています。ともに苦労をしてきた妻は、若いころの無理がたたり現在は入院しています。高校に通いたいと願っていた妻に代わり、自分が高校で勉強したことを妻の前で教えています。

戦後生まれの長嶺はクラスでも浮いている存在でしたが、「総合」の授業で自身と妻の生い立ちを語ることでクラスの理解を得ます。

妻に「どんな親もとに生まれるかは運次第、それで人生が決まる」、「自分たちの時代は、良くてもせいぜい高校に行けるくらいの地味で質素な違いだったが、今は違う。恵まれた世界中の若者が身近に見えている」と言われます。

「今は、このさきどんどん良くなる時代ではない。何も約束されていない現役世代に、甘いや頑張れというのは的外れなのかもしれない」と考えます。

うぃんはむ
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世代間ギャップってあるあるだよね…。会社とかでもすごく感じるもんね。この章は長嶺と岳人の距離が縮まる様子が描かれていて、実社会にも見られる現象では?と感じました。

“こういうものがあればいいな”という、ザックリとしたアイディアを形にする長嶺。長嶺が科学部に加入することで、部員の頭にある漠然とした“モノが形に”なっていきます。

第五章 コンピュータ室の火星

  • 主人公:丹羽要(にわ かなめ)高校2年、全日制の生徒
  • 章に副題をつけるなら:交錯する世界と見えない繋がり

五章の主人公は、定時制高校と同じ教室を使っている昼の全日制高校二年の丹羽要です。要が使っている席は夜間は岳人が使っています。

毎朝机の上は消しゴムのカスだらけで、教科書やノートを入れる物入にはパンの袋やたばこの空き箱が突っ込んでおり、朝一にそれをゴミ箱に捨てるのが要の日課となっています。

しかし、ある時物入れにはデータが書かれたグラフ用紙が入っており、そこから夜間の岳人と用紙でやり取りをするようになります。

要は数学や物理の大会で有名な科学オリンピックの一つである、プログラミング能力を競うコンテストである情報オリンピックの本選に出場するほどの優秀な生徒です。しかし、入学試験前夜に弟が癇癪を起こしたことで受験日当日に平静を保てず、受験に失敗したことからこの高校に通っています。

ふむはむ
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両親の不仲が原因で父親が家を出ていき、現在は母と些細なことで癇癪を起こす弟と一緒に暮らしています。

放課後はコンピュータ準備室でプログラミングの練習をしていますが、ある時そこで作業をしている藤竹に出会います。“実験をするから、要が放課後に使っている教室を数か月貸せ”と言います。情報オリンピックを目標にしている要は反対しますが、藤竹と岳人により科学部の実験見学に連れて行かれます。

教室で「火星を作る」という定時制高校科学部の実験を最初はバカにしていた要でしたが、実際に見てみると要も興味を持ってしまいます。“こんなことも分からないのか”とバカにする要に“何を学べばいいのか教えてくれ”と真剣に返す岳人。

志望校へ行けなかったことで学歴コンプレックスを抱えていた要は、科学部メンバーの生き生きとした姿に羨ましさを感じます。また、岳人との交流を通して、ヒステリックに物に当たる弟の気持ちを理解します。

うぃんはむ
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親や人を殴るのは簡単にできることじゃない、自分を守るためにも、代わりに物をぶっ壊すんだという岳人に胸が締め付けられたのは要だけじゃないはず。

夜間の生徒たちとの交流を通じて、要は初めて自分の殻を破り、見えていなかった世界と向き合う勇気を持つようになります。

第六章 恐竜少年の仮説

  • 主人公:藤竹叶(ふじたけ かなえ)34歳、定時制高校の理科教師
  • 章に副題をつけるなら:藤竹が科学部を立ち上げた理由

第六章では、それまで順調に活動していた科学部に波乱が訪れます。かつて岳人とつるんでいた三浦が学校に乗り込んできて科学部の実験装置を破壊したことで、部員の間に亀裂が入ります。

ふむはむ
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自分と同じ世界の人間だと思っていた岳人が、急に真面目になったようで三浦には面白くなかったんだね。

「もう使っていない」と言う岳人に、長嶺は”向こうがそう思っていないからこんな事件が起こるんだ”と言い、佳純はストレスから過呼吸を起こし、アンジェラも自身が原因で装置を壊してしまい科学部の存続が危ぶまれます。

長峰の「柳田が夢をもったこと喜びたいが、夢に向かって必死になるほど、それが壊れた時の傷も深い。学会に出るような夢を持たせて本当にいいのか」と藤竹に問うシーンは、“やる前からどうせダメだと諦めてしまう”現代の人にも届く言葉のように感じます。

三浦と決着をつけた岳人と科学部メンバーを前に、藤竹は自分の想いを語ります。

Q
藤竹は定時制高校で実験をしていたと言います。藤竹の実験とは何か?
A

かつては優秀な研究者だったが、日本では熱意ある若者が必死に活動しても、研究結果や手柄は上に取り上げられてしまうという古い体質が嫌になり渡米した藤竹。

アメリカでは技術者が学生にも対等に接しており地位や名声に関係なく、“共同研究者であり同僚”の関係を築いているのを目の当たりにしショックを受けます。

日本で同じような現象を見ることはできないのか。と考えた藤竹は、定時制高校を舞台に科学部を作り、学会発表を行うよう彼らを導くことを思いつきます。

実験に対する藤竹の仮説は「どんな人間も、その気になれば、必ず何かを生み出せる。」というもの。

うぃんはむ
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仮説を聴いた佳純は、「相手を信じてるやるのは実験じゃない」と言います。

藤竹の想いを知ったメンバーは結束を新たに、実験を再開します。岳人の「この科学部が藤竹の実験かどうかはどうでもいい。俺はただ、俺たちの実験を続けたい」と言った言葉が印象的でした。

長嶺が最期「これで、いいってことだな」と確かめるように藤竹に問うと「人間は、その気にさせられてこそ、遠くまで行ける。私は、そう思います」返すシーンは胸が熱くなります。

第七章 教室は宇宙をわたる

  • 主人公:柳田岳人(やなぎだ たけと)21歳
  • 章に副題をつけるなら:その気になりさえすれば、何だってできる

学会の口頭発表に参加できるのは選ばれた学校のみ。優秀な進学校に交じり定時制高校が6倍の競争率を勝ち抜き学会発表当日を迎えます。

この7章は1章の岳人に再びスポットが当てられ、最初の岳人を知っている読者には岳人がいかに成長したかを感じられ、涙なしには読めない展開となっています。

口頭発表は岳人と佳純が行い、最後には優秀賞に選ばれます。口頭発表ができるだけでも涙物の展開でしたが、まさか賞を受賞できるとは!?、小説だからフィクションなんだと思いきや、あとがきにはモデルの高校があったというから驚きでした。

そして、物語はこれだけでは終わりません。国際会議場からの帰り、来年の話をしている科学部メンバーに声をかけたのは、藤竹の友人で現在はJAXA(宇宙航空研究開発機構)で小惑星探査計画でサンプル採取チームの研究副責任者でした。

ふむはむ
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何と何と!「はやぶさ2」の後継となる探査機を作るための基礎実験を一緒にやってくれないかというお誘いが…っ!

うぃんはむ
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これぞ、アメリカで見た藤竹の夢が現実となった世界でした。ここが号泣もののシーンでした!

「この学校には、何だってある」という藤竹の言葉を思い出す岳人。“藤竹の言ったことは正しかった。その気になりさえすれば、何だってできる”ことを実感する岳人は最後、下記のように物語を締めます。

僕の居場所は、しんとした校舎に窓明かりがともる、あの教室だ。
窓から暗い夜の街しか見えない、あの教室だ。
そして、俺たちの教室は今、宇宙をわたる。

引用元:宙わたる教室

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結末から考察!「宙わたる教室」で作者が伝えたいこととは?

『宙わたる教室』の結末は、定時制高校の科学部が学会での発表を経て優秀賞を受賞し、その後JAXAから「はやぶさ2」の後継探査機の基礎実験に誘われるという想定外の展開で締めくくられます。

この瞬間は、単なる学びの延長ではなく、科学部のメンバー全員が文字通り“宙をわたる”存在になることを象徴しています。藤竹の「どんな人間も、その気になれば、必ず何かを生み出せる」という仮説が現実となり、全員がその気になった結果として、一つの夢が形になる瞬間が描かれています。

学会での発表に至るまでの道のりは決して平坦ではなく、過去の自分との葛藤や障がいとの向き合い、部員同士の衝突などが描かれていました。困難を乗り越え、最終的に彼らが夢を掴む姿は、読者に深い感動と達成感を与えます。

また、最後に岳人が語る「俺たちの教室は今、宇宙をわたる」という言葉は、科学部の活動が新たな次元に移行したことを示しており、物語のテーマを力強く締めくくっています。

読者はどう感じる?結末が読者に与える感情

この結末は、読者に「自分も何かを成し遂げられる」という希望と勇気を抱かせます。

多くの困難を抱え、一部は社会の底辺にいると感じていた定時制高校の生徒が、学びを通して自分の殻を破り、宇宙規模のプロジェクトに参加するという夢のような展開は、「自分にもこんな未来があるかもしれない」と思わせてくれます。

各キャラクターの個人的な成長と、チームとしての達成が描かれたことで、読者は小説の登場人物と共に喜び、感動し、自分自身を重ね合わせることができるでしょう。

ふむはむ
ふむはむ

第一章の岳人の現状でタバコやシンナーなどの単語が出てくるし、高等学校の読書感想文の課題図書としてはどうなの?って思ってたけど、こんなに良い話だなんて!?と感動しました。

作品を通して作者が伝えたいこととは?

『宙わたる教室』を通じて、作者の伊与原新が伝えたいのは、「その気になれば、誰でも可能性を広げられる」というメッセージです。どんなに不利な状況でも、自分自身を諦めず、学び続けることで未来は切り開けると物語は教えてくれます。

科学部の生徒たちは、学校教育の枠を超えて自分たちの限界を突破していきます。彼らが持つ「もう一度挑戦する」という気持ちは、年齢や背景に関係なく、誰しもが心のどこかに持っている“青春”のエネルギーそのものです。

物語は、「失敗や障がいに縛られない生き方」「人を信じて応援することの大切さ」を強調し、それを具現化するのが科学という挑戦的なテーマです。藤竹が掲げる“実験”の理念は、学びを通して人を変える力があるという確信の現れであり、それは読者にも「学び直しの力」を再認識させてくれます。

うぃんはむ
うぃんはむ

学生が読んだら色んな世界を知れるし、大人が読んだら即、何か学び直ししたくなるようなお話でしたね。

物語のテーマやメッセージ

物語の中心テーマは、「学びと再生、そして可能性の探求」です。科学部のメンバーが、自分の人生を諦めず、何度でも挑戦する姿は、読者にとって励ましと同時に警鐘でもあります。「失敗は終わりではなく、新たなスタートである」というメッセージが全編を通して響いています。

また、定時制高校という特別な場所が象徴するように、物語は「多様な背景を持つ人々が共に学び、成長できる環境」を描いています。人はそれぞれの環境や背景を持ち、それが彼らの行動や価値観に影響を与えますが、だからこそ互いに理解し合い、支え合うことの大切さが強調されています。

作者の意図や背景にある思想

伊与原新は、実際にあった定時制高校の科学部の活動に感銘を受け、この物語を執筆しました。彼の背景には、「日本の教育現場における多様性の欠如」や「社会からこぼれ落ちてしまう人々への共感」があり、それが作品の根底に流れているように感じます。

伊与原は、「誰もが学び、成長できる場所を作りたい」という強い願いを込めて、この物語を書いているのではないでしょうか。彼の描くキャラクターたちは、決して特別ではない、どこにでもいるような人々であり、だからこそ共感できる存在です。

そして、彼らが夢に向かって進む姿を通して、現実社会の中でも誰もが挑戦する価値があると訴えかけています。

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考察まとめ:『宙わたる教室』が伝えるもの

『宙わたる教室』は、ただの青春小説ではなく、人生に再挑戦するすべての人にエールを送る作品です。多様な背景を持つ登場人物たちが、自分自身を乗り越え、新たな世界へと飛び立つ姿は、現代社会においても非常に示唆に富むものです。科学というテーマを通して、「学ぶことの楽しさ」「自分の可能性を信じること」がどれほど重要かを読者に強く伝えています。

この作品を読むことで、誰もが持つ“青春”の気持ちが再燃し、自分のやりたいことにもう一度挑戦しようという気持ちが芽生えるでしょう。『宙わたる教室』は、自分を諦めそうな時にもう一度自分の手で未来を掴む勇気をくれる一冊です。ぜひ手に取って、彼らの物語を感じ取ってください。

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NHKでドラマ化も納得の内容!ドラマはどうなるのかな?原作に忠実にではなくとも、作者の思いを汲んで作ってほしいです。

≫【ドラマ全話あらすじ】宙わたる教室、最終回の結末までのネタバレ感想!原作比較

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