この記事では、NHKでドラマ化がされる藤岡陽子の小説『リラの花咲くけものみち』のあらすじ、結末、そして読んだ感想をネタバレありで詳しく解説します。
物語に込められたメッセージや魅力についても触れていきます。青少年読書感想文全国コンクールの指定図書に選ばれたこともある本書は、学べる部分が多くあり、中高生にもおすすめの本となっています。
どんな話かを簡単に知りたい方向けに、簡単なあらすじとラストを紹介した後、一章から八章の全章のエピソードを紹介し、感想と共に詳しく紹介しています。
【あらすじ】挫折から歩き出す少女の物語
北海道の広大な自然を舞台に、不登校を経験した主人公・岸本聡里(きしもとさとり)が獣医師を目指して成長していく物語です。母を早く亡くし、継母からのネグレクトを受けていた彼女が、祖母・チドリに引き取られ、やがて獣医師の道へ進む決意をします。
大学生活では動物たちや仲間たちとの交流を通じて、命の重みや生きる意味について学びます。しかし、獣医師という仕事には厳しい現実が待っていました。それでも聡里は少しずつ前を向き、自分の道を見つけていくのです。
挫折から立ち直って夢に向かうなんて、もう応援したくなっちゃうよね!北海道の大自然が舞台ってだけで、癒されそうな予感…♪
【結末ネタバレ】聡里が見つけた“自分の道”
物語は、大学入学から6年間を描いています。聡里は当初、伴侶動物(ペット)を診る獣医師を目指していましたが、産業動物(家畜)と関わる実習での経験が彼女を変えます。最終的に、彼女は産業動物の獣医師となる道を選びます。
大学生活の中で支え合った同級生の久保残雪(くぼ ざんせつ)と結婚し、聡里は自分の選んだ道を胸を張って進んでいきます。物語は、大学卒業から六年後、30歳手間になった彼女が牧場で牛の診療をしているシーンが最後に描かれます。
命を扱う仕事って本当に覚悟が必要だよね…。聡里、すごいなあ。「リラの花咲くけものみち」ってタイトルが、最後に繋がるんだね◎
「リラの花咲くけものみち」ってどんな話?簡単に結末までを紹介
この小説は、小学4年で母を亡くし、父が再婚した継母との関係が上手くいかず不登校となった主人公・岸本聡里が獣医師を目指し大学生活を送る中で、自分の居場所を見つける過程を描いた一冊です。
中学時代は不登校だったものの、祖母・チドリに引き取られたことで高校はチャレンジスクールに通う中で聡里は獣医師になりたいと思うようになります。しかし受かったのは、北海道の北農大学で自宅から通えないため寮生活になります。
寮のルームメイトである梶田綾華(かじた あやか)とは、最初確執があったものの聡里が自身の過去を話したことで急接近し、親友となります。聡里が入寮初日に彷徨っていた犬を拾った時助けてくれた、加瀬一馬(かせ かずま)に淡い恋心を寄せるも、一馬は聡里が憧れていた先輩でもある静原夏菜(しずはら なつな)と一緒になり聡里の初恋は実りません。
大学生活の中で育ててくれた祖母を亡くしますが、チドリの元に慌てて帰る聡里を送ってくれた同級生の久保残雪と最後は結婚します。聡里は伴侶動物を診る医師を目指していましたが、最終的には産業動物を診る医師になります。
ネタバレ「リラの花咲くけものみち」あらすじ詳細
本小説は全八章から成っており、それぞれに花の名前が登場します。ここからは、各章について、時期と花言葉とともにあらすじを詳しく紹介します。
第一章:ナナカマドの花言葉
祖母のチドリに連れられて聡里が入寮するシーンから物語が始まります。北農大学は私立で学費が高いため、聡里を大学に入れるためチドリは家を売り月3万円の仕送りをして聡里を支えます。
大学に入るまで人付き合いをあまりしてこなかった聡里は、すぐには寮のルームメイトと打ち解けられず、入寮日に生活に必要なものを買い出しに出かけた時に、歩き疲れた柴犬を見つけます。どうしていいかわからずにいた聡里の前に、寮長の静原夏菜が通りかかり声を掛けてくれます。
聡里が事情を話すと、一緒にいた加瀬一馬が自身がアルバイトをしているナナカマド動物病院に連れて行き手当してくれることになります。
寮でルームメイトの綾華はもちろん、同級生の残雪、初恋の相手一馬と夏菜とも一章で出会います。
第二章:ハリエンジュの約束
入寮日に大学寮の場所はどこかと声をかけてきた同級生・久保残雪が、携帯電話を探していたため聡里の携帯から電話をかけたことで残雪との距離が近づきます。
また、実習に使う作業着を買いに出かけた先で、入寮日に犬を助けてくれた一馬と再会し、その日助けてもらった犬の様子を見に、一馬が動物を保護している部屋を訪れます。そこで一馬の祖父も獣医師であること、また一馬が獣医師を目指した理由を聞きます。
それなりに上手く大学生活を送っていると思っていたものの、ルームメイトの梶田綾華が聡里を嫌っていること、部屋替えを希望していることを偶然知ります。ショックを受けたものの本人に思い切って尋ねてみたところ、聡里のことが気持ち悪いと言われます。
理由は、聡里は深夜みんなが寝静まった後、古いケーキの箱を取り出していたためです。気になった綾華が中を見てみると中には骨があり、それを見た綾華は聡里に対し嫌悪感を持っていました。
それをきいた綾華は「(パールを)あんな小さな場所に閉じ込めていたら、窮屈でしょう。いつか、お別れを言える日が来るといいね」と言います。
近寄りがたいと思っていた綾華との距離が一気に縮まった瞬間…!
第三章:ラベンダーの真意
聡里が自分の過去を話してから綾華との仲が急接近!夏休みには二人で夏季臨床実習に参加します。そこで、綾華の父は病院経営者で綾華の兄二人は医師であること、自分は期待されなかったのが悔しく、医学部を受けたものの落ち、この大学に来たことを聞かされます。
“人生を変えようとしてここにいる聡里を見て、私も私の人生を本気で変えたい”と思ったと言い、聡里と綾華は互いを名前で呼び合うようになります。
一日目の実習が終わると、夏菜が「今からうちの牧場に来ないか」と誘いに来ます。何でも実家で馬のお産が始まるとのこと。行ってみると一馬もおり、お産を手伝っています。命の誕生を今から見れると楽しみにしていましたが、現実は厳しいお産となり仔馬を諦めるという判断になります。
夏菜が聡里に厳しい声を投げかけたのには、自身の父親も獣医師で、競走馬の命運を左右する重責に耐えられず、退職後に自殺していたことが理由でした。
夏菜が聡里に厳しい言葉をかけたのには、ちゃんとした理由があったんだね。夏菜の想いもわかるなぁ…。
第四章:再開のマリーゴールド
夏季臨床実習を初日で辞め寮に帰ったもののすることがなく、帰省した聡里は、東京でかつて自分が暮らしていた家をこっそり見に行きます。すると、継母と父との間にできた妹の唯に声を掛けられ父親が聡里の写真をスマホに入れていたことを知ります。
また、15歳の誕生日に聡里を引き取ったチドリでしたが、その日に渡したいものがあったことをチドリの妹・フサエからききます。チドリに何を渡したかったのかを尋ねると、聡里の母が15歳の頃に20歳になった自分へ向けて書いた手紙を渡されます。
実習を取りやめ寮からいなくなった聡里を心配し連絡を取ってくれた、綾華や残雪にも助けられ、聡里は臨床実習へ戻ることを決意します。
強く生きた母親の話が聡里に勇気を与えたんだね。お母さんはもちろん、チドリも明るく強い女性で憧れます…!
第五章:クリスマスローズの告白
二年生になり、野田響(のだ ひびき)という聡里を慕う後輩ができます。響の相談に乗る聡里はすっかり上級生。二年生になり始まった犬の解剖実習の様子が描かれますが、ここでは聡里も綾華も一年次とは異なり成長した姿を見せます。
順調に大学生活を送る中、卒業が迫り忙しくなってきた一馬に「ナナカマド動物病院で自分の代わりに働いてみないか」と声を掛けられます。自分には荷が重いと即座に断った聡里でしたが、なら自分がアルバイトをしたいと即答した響を見て、一年生がやる気になっているのに自分が臆することはないと考えを改め、一馬の後を継ぐ決心をします。
動物病院では、飼い主によってペットの運命が変わることを目の当たりにし、自分の将来を真剣に考え始めます。また、一馬の卒業が近づいてきたことで自分の恋心を打ち明ける決心をした聡里は、卒業式の日にクリスマスローズを渡し想いを伝えることにします。
気持ちは伝えた方がいいって残雪に言われたんだよね。でも、想いを伝える前に失恋…。初恋は実らないっていうけど、切ない結末になりました。
第六章:ガーベラの願い
卒業後は犬猫などの伴侶動物を診る医師になろうと決めている聡里は、助けてもらえる動物と見捨てられる動物の違い、獣医療について考えます。
動物の命の在り方を考えることに意味がないとは言わないが、人にはそれぞれ領域がある。獣医師にも領域はあり、それは個々で違っていいと思うと、残雪なりの考えを教わります。
9月に帰省すると、祖母チドリの左半身が麻痺しているのを知り、休学したいと言い出すものの、チドリの「休学してほしくない、自分の目標は聡里の北農大学の卒業式に出席すること。そのためにリハビリを頑張っている」との言葉を受け、休むことなく大学へ通います。
常に前向きで“不幸中の幸い”を見つけるのが得意なチドリ。いつも聡里お背中をそっと押してくれます。
第七章:シラカバの抱擁
図書館で勉強をしていた聡里の元へ、フサエから「チドリが入院したので、今すぐ東京に戻るように」との連絡が入ります。慌てて図書館を飛び出した聡里を見て、残雪は新千歳空港まで車で送ってくれます。
東京に着くと空港に待っていたのは、わだかまりのある父で聡里の心は乱されますが、背に腹は代えられぬと父の車でチドリの病院へ向かいます。しかし、病院に着くと既にチドリは息を引き取っていました。チドリの葬式の喪主を務めた聡里は、出棺時にチドリの棺の中に未だ供養できず持っていたパールの骨を、副葬品として納めます。
火葬を終えチドリの団地に戻ると、そこへ父が訪ねてきます。父に「うちに戻ってこないか」と言われた聡里はキッパリと拒否し、逆に名字を母方の性である「牛久」に変えたいと言います。父とは完全に決別した聡里でしたが、最後に十五歳から十八歳まで仕送りをしてもらったことに対しての礼を言い、北海道へ帰ります。
残雪ーーーッ!! 残雪は聡里のことを、初めて会った瞬間から好きだったんだって。何となく気づいていたけど、ここに来てやって気持ちを伝えてくれました。
第八章:リラの花咲くけものみち
六年次には、一年目の夏休みと同じ実習先で聡里は成長した姿を見せます。伴侶動物の獣医師になると決めていた聡里でしたが、綾華に“卒業したら産業動物には一生関わらないかもしれないから、学生の間だけでも勉強しておきなよ”と誘われ、参加することにしたのです。
綾華とは別の実習先でしたが、実習の中で獣医師と農家の距離が近いこと、その土地で獣医師がともに生きていることを肌で感じ、自分の居場所を見つけたいと思っている聡里の気持ちに変化が出てきます。最終日に折原農場で牛の出産を手伝った聡里が帰りの電車を待っていると、先ほどの折原夫妻がお弁当を持ち駆けつけてくれました。
最後は六年後、サトと名付けられた聡里が出産を介助した牛の仔牛を診療する聡里の姿が描かれます。そこで結婚すること、また相手が残雪であることが描かれ、残雪から「幸せになろう。これからは一緒に生きていこう」と伝えられます。
18歳の時、チドリに手を惹かれて歩きはじめた道の終着点、“春になるとリラが咲き誇るこの道は、明るく険しいけものみち。自分が選んだ自由な道を、これからも後戻りすることなく歩いていく”と、前を向いて力強く生きていく聡里の姿が描かれ終話します。
ボク、読んでいる間に何度も泣いちゃったよ…。特にチドリとのやり取りは勇気を貰えるから、学生に読んで欲しい本だと感じました。
【感想】命の重さと生きる意味を教えてくれる一冊
『リラの花咲くけものみち』は、動物を通して命の大切さや人間関係の温かさを教えてくれる作品です。以下、特に印象的だったポイントをまとめました。
命の現場のリアルさ
聡里が最初に経験する馬の出産のシーンは、この物語の象徴ともいえる場面です。生まれたばかりの仔馬を犠牲にして母馬を救うという選択を目の当たりにし、獣医師の現実に直面します。このシーンは、命を扱う仕事の厳しさを鋭く描いています。
最初からハードな展開だけど、現実の厳しさを教えてくれるよね…。こういうシーンがあるからこそ、聡里の成長が心に響きます。
仲間たちとの絆
聡里とルームメイトの梶田綾華の関係性は、最初は険悪ながらも少しずつ親友へと変わっていきます。また、同級生の久保残雪の優しさや、先輩・加瀬一馬との憧れの関係など、人間模様が豊かに描かれています。
聡里と綾華の友情が深まる過程、すごく共感できたよ。大学生活の中では、悪い人が全然出てこないのにビックリ。
東京で15歳の誕生日にチドリが迎えに来てくれるまでが聡里に人生のどん底だったんじゃない?残雪くんみたいな優しい人、現実にもいてほしい~!
北海道の美しい自然
物語の随所に登場するリラの花やナナカマドなどの自然描写が、読者に深い印象を与えます。自然は登場人物たちを包み込み、そっと背中を押してくれる存在として描かれています。
北海道の景色が鮮やかに目に浮かぶようだったよね!自然が彼女たちを見守ってる感じがステキだったなあ…。
ドラマはもちろん、北海道で撮ってるんだよね。江別市の大学などがロケ地だったどか!どんな作品になるのか楽しみだなぁ♪
書評まとめ:心に花を咲かせる物語
『リラの花咲くけものみち』は、命と向き合う仕事の厳しさをリアルに描きつつ、人と人との温かな絆や大自然の癒しを伝えてくれる作品です。読後には、自分の人生や命について考えさせられることでしょう。
まだ読んでいない方は、この冬にぜひ手に取ってみてください。心にリラの花が咲くような読書体験が待っています。購入する場合は、U-NEXT(初回600ポイント付与あり)やDMMブックス(初回限定クーポンあり)がお得です。
リラはライラックのフランス語名なんだって。北海道では春先に寒さが戻ることをリラ冷えって言うらしいよ。
感動必須の一冊!ホクはチドリさんの話で号泣だったよ…。読後にリラの花を見に北海道に行きたくなる人、絶対いるはず!
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