2022年2月12日にTBSの「王様のブランチ」で高評価を受け、瞬く間に話題となった佐野広実の『誰かがこの町で』。江戸川乱歩賞受賞後の第一作として、多くの読者に衝撃と恐怖を与える物語となっています。
新興住宅地・鳩羽地区を舞台に、住民同士の異常な監視と同調圧力、そして隠された闇が浮き彫りにされる社会派ミステリーです。今回は、原作小説『誰かがこの町で』のあらすじ、結末までをネタバレを交えて解説します!
ミステリー好きなボクは、江戸川乱歩って聞いただけでワクワクするよ~。ボクの感想も交えて小説を紹介します。ネタバレがあるので注意してください。
原作小説『誰かがこの町で』あらすじ
物語は、法律事務所を訪ねる一人の若い女性・望月麻希(本名:松原宏子)から始まります。幼いころに児童養護施設で育ち、自分の家族が失踪していたことを知った麻希は、家族の行方を調べるため、母の親友である弁護士・岩田喜久子に助けを求めました。
真崎雄一(演:江口洋介)は、麻希とともに家族の失踪事件を調査するため、かつて望月一家が暮らしていた鳩羽地区(※ドラマでは「福羽地区」となっていましたが、今回は原作の紹介なので鳩羽地区で統一しています。)を訪れます。
しかし、表向き「安全で安心な町」として売り出されている鳩羽地区は、異常なまでの監視体制と、外部の人間に対する不信感が渦巻く、閉鎖的なコミュニティだったのです。
小説では、麻希に出し抜かれて真崎は後から現地入りします。鳩羽地区って、いかにも住みやすそうな名前だけど、中身は恐ろしい世界が広がっているんだよね。
見た目に騙されちゃダメってことだね。住んでみて、初めて恐怖に気づく…なんてゾッとするよ…。最初に言っておくと、この小説はホラー寄りです。
誘拐殺人事件の犯人は、菅井昭次郎の息子・輝夫
麻希の家族が鳩羽地区に引っ越す数年前、この町ではある幼児誘拐殺人事件が発生しました。事件の被害者は、小学1年生の男の子・木本貴之。母・千春が警察に通報するも、住民たちは「安全で安心な町に悪人はいない」と信じ込んでいたため、真相は迷宮入りしてしまいます。
菅井地区長が息子の犯罪を隠すために町全体を巻き込んだんだよね。この時点で既に怖すぎる!ってゆーか、ちょっと真実味がない話に思えるんだよなぁ…。
普通だったら、息子の罪を隠そうとするんじゃなくて警察に突き出すよね…。これが鳩羽地区の異常さを物語ってる…。
町ぐるみで真相を葬る!驚愕の隠蔽工作とは?
菅井地区長は、輝夫の犯罪を隠すため、不動産会社の経営者である延川善治に協力を依頼します。延川は「安全で安心な町」のイメージを守るため、ベトナム人の技能実習生グエン・タン・ミンが犯人であるという噂を流し、住民たちの不満をそちらに向けさせました。これにより、真犯人である輝夫は表沙汰になることなく、事件は未解決のまま放置されます。
無実のグエンさんが犠牲になるなんて…。犯罪の隠蔽のために異国の人を巻き込むなんてひどすぎる!警察より自分たちが正しいと思ってる住民が怖いよ…。
グエンさんは真面目に働いていただけなのにね。町の人間は全員善良な人で、外国人は悪人だなんて…人種差別的な偏見も見え隠れするね。
望月一家失踪も町ぐるみの犯罪!麻希の母・良子の捜査とその結末
幼児誘拐殺人事件は未解決のまま月日が経ち、木本家の隣に麻希の家族である望月一家が引っ越してきます。母親の良子は、地区のルールや住民たちの監視に強い疑問を抱き、さらに木本千春から子どもを事件で亡くしたことを打ち明けられます。その事件が未解決だと知った亮子は、貴之の事件を調べ始めます。
しかし、息子の罪が再び暴かれそうになることを恐れた菅井と、犯罪の隠蔽に加担した町の治安を守る地区長代理の延川は、防犯係と協力して、望月一家を「町の平和を乱す存在」として排除しようとします。
最終的に、良子はクリスマスが近づくある晩、町の住民によって家族もろとも殺害され、赤ん坊だった麻希だけが千春の手によって児童養護施設へと連れて行かれるのです。
千春さんは苦しみながらも、せめて赤ん坊の麻希だけは助けようとしたんだね。でも、自分の息子を殺した輝夫の父親に協力し今度は自分が犯罪に加担!?
千春さんは何も聞かされず、急に犯罪現場に連れていかれたけど…同じく息子を殺された夫が防犯係の役員として望月一家を殺害するって…どういうこと!?
息子を殺された千春だからこそ、赤ん坊を救いたかったのかもしれませんが…夫の行動が理解できません。赤ん坊の麻希を守る千春を見て、夫も麻希だけは助けてほしいと延川たちに懇願します。
千春の命を懸けた最後の賭け!隠された真実が暴かれる
19年後、麻希が鳩羽地区の真実に迫り、当時の事件を再び掘り返そうとすると、延川は千春を呼び出し、麻希が本当に望月麻希であるかどうかを確認します。そして、一連の事件が明るみに出るのを恐れ、千春を口封じのために殺害してしまいます。
しかし、千春の死をきっかけに真崎雄一が動き、裏山の祠に埋められていた望月一家の遺体が発見されます。これにより、事件の真相がすべて暴かれ、菅井と延川をはじめ、鳩羽地区の住民たちの罪が明るみに出たのです。
千春はもう長くない命だと分かっていたからこそ、自らが殺されることで延川を巻き込んで一連の秘密を暴露できる方に賭けたという結果なんだけど…。
改めて思うけど、大分無理のある展開だね?いや~。思い切りフィクションって感じ。リアリティーがない小説だなぁ…って、思っちゃったよ。
人間心理の闇を描く社会派ミステリーの傑作
『誰かがこの町で』は、住民の「同調圧力」と「自己保身」がどれだけ恐ろしい結果を招くかを描いた作品です。物語の最後で明らかになる望月一家の真相や、千春の勇気ある決断が、この作品の核心的なメッセージを際立たせています。
2022年当時反響を呼んだということは、コロナ化で閉鎖的だった2019年以降の日本社会と関係しているのかもしれません。麻希が真実を知り、自分の過去を受け入れようとする姿勢が、読者に余韻を残したのでしょう。
最後まで緊迫した展開が続くから、読み終えた後もしばらく頭から離れないかも。悪い意味でツッコみ所が多すぎで、ボクは好きになれなかったなぁ…。
途中から幼児誘拐殺人事件の犯人も望月一家の失踪も本当は、町ぐるみの犯行では?と分かったから面白みに欠けたよね。好き嫌いが別れそうな原作かも?
真崎雄一と岩田喜久子が、望月麻希のために奔走した理由
物語の中で、真崎雄一が望月麻希のために真相解明に奔走する理由は、彼がかつて自身の娘を失った経験と後悔に起因しています。真崎は以前、リコール隠しに加担した大手自動車会社の社員でしたが、会社での不正を隠蔽することに立場にいたことで自らも苦しんでいました。
そして、同じ時期に、真崎の娘・絵里は学校でいじめ問題の首謀者に仕立てられ、自ら命を絶ってしまいます。自分が長いものに巻かれて娘が助けを求めていたことに気づけなかったこと、娘を救えなかった後悔が、今度こそ麻希を救いたいという想いに繋がっていたのです。
また、岩田喜久子もかつて麻希の母・望月良子が鳩羽地区で失踪した際、助けることができなかったことへの悔恨から、良子の娘である麻希を支えようと決意します。岩田喜久子は帰国後に、望月良子の行方や良子から送られてきた幼児誘拐殺人事件の資料の真相を確かめようとします。
しかし、岩田喜久子の父親がそれを阻止。なぜかというと、父が参議院議員になるときに応援してくれ、同じ党派の菅井地区長の身内の失態を表ざたにできなかったためです。
この二人の複雑な過去と後悔が、望月麻希のために町の闇を暴く強い動機となりました。
真崎さんにとって、麻希は娘・絵里のようにも感じたんだね。過去の失敗を取り戻そうとする気持ちが伝わってくる…。
そして、喜久子さんも友人だった良子の娘を何としてでも救いたいと願ったんだね。二人の強い絆が、この事件の解決に繋がったんだ!
『誰かがこの町で』の結末:まとめ
『誰かがこの町で』は、「安全で安心な町」を守るという名のもとに、住民同士が追い詰められ、衝撃の真相にたどり着く社会派ミステリーです。
人間の心理的な闇や、同調圧力の恐ろしさをリアルに描いた本作は、好き嫌いが分かれるとは思いますがミステリーファンには必見の作品です。町の風評を守るために何の罪もない人を手にかけてしまうという、常軌を逸した展開をどこまでリアリティーある映像に落とし込めるかが見どころです。
現代の問題が詰まってる作品だったけど、それだけに町内の横の繋がりというのが想像しにくいんだよねぇ…。この小説が刺さる世代なら面白い…かも?
同調圧力の恐ろしさを感じるこの作品は、社会への警鐘ともいえるね。日本人は同調して波風立てないでおきたい人が多いから、一定層には分かる話かも!?
自分たちの子どもを殺された犯人を守るような行動を取る木本夫妻の行動には全く理解できず、リアリティーに欠けるのではないか?というのが、正直な感想でした。